「パワハラ相談員とは何のことでしょうか?
厚生労働省が、自省内に配置した「パワハラ相談員」が、部下にパワハラを行ったとして懲戒処分を受けました。
パワハラ相談員とは何なのか、どんなパワハラ事件だったのか調べてみましょう。
ハラスメント相談窓口とは?
ハラスメント窓口とは何のことでしょうか?
2020年6月に施行された、いわゆる「パワハラ防止法」によって、企業には「ハラスメント相談窓口」を用意して、ハラスメントに関する相談に対応する義務が生じました。
企業内部の相談窓口の担当者は、人事労務担当部門などから選任された人が、ハラスメントに遭った人から話を聞いて対応することになっています。
とくに資格などは求められないようですが、相談内容を記録して、関係者に事実確認を行う役割を担うことになります。
中立的な立場で双方の言い分を聞き、事実確認を行うためには、専門的な知識も必要になります。
そこで、パワハラ相談員の出番です。
パワハラ相談員とは何のこと?
「日本ハラスメントカウンセラー協会」という一般財団法人が研修を行って認定している「資格」が「パワハラ相談員」ということのようです。
東京エクセル法律事務所の坂東利国弁護士(東京弁護士会)か、旬報法律事務所 細永貴子弁護士(東京弁護士会)が講師をつとめる講座に参加するか、オンラインで受講することで「パワハラ相談員」という資格を得ることができる仕組みです。
パワハラ相談員には階級があり、
認定ハラスメント相談員Ⅱ種→ハラスメントカウンセラー→ハラスメントマネージャーⅡ種→上級ハラスメントマネージャー→幹部→ハラスメント調査員、と6段階になっています。
日本ハラスメントカウンセラー協会とは?
「日本ハラスメントカウンセラー協会」とは何でしょう?
平成30年10月に設立された「一般財団法人 日本ハラスメントカウンセラー協会」は、東京都千代田区に事務所を構えています。
設立の目的は、「当法人は、会社等におけるハラスメント防止に関する事業を行い、職場の労働環境の改善を通して働く人と会社等に寄与することを目的とする。」と書いてあります。
事業として、
(1) 様々なハラスメントを防止するための教育事業
(2) 様々なハラスメントを防止するために職場の意識を高める為の事業
(3) 会社等のハラスメントを防止するための管理業務の請負、及びコンサルティング事業
(4) その他前条の目的を達成するに必要な事業
と掲げられていて、会長は「一松信」という方です。調べてみると、一松信(ひとつまつしん)さんは大正15年生まれの京都大学名誉教授であることがわかりました。
「日本ハラスメントカウンセラー協会」を設立したのは、「全日本情報学習振興協会」という一般財団法人で、「本財団は文部科学大臣の許可法人、文部省生涯学習政策局の所管の団体として平成11年10月にスタートした」と書かれています。
全日本情報学習振興協会とは?
全日本情報学習振興協会とは何でしょう?
個人情報保護士、マイナンバー検定、働き方マスター試験、企業危機管理士、パソコン検定などに混じって「認定ハラスメント相談員Ⅰ種」「ハラスメントマネージャーⅠ種」の試験もあります。
全日本情報学習振興協会と、日本ハラスメントカウンセラー協会とで、「ハラスメント」関連の資格制度を分け合っていることがわかります。
全日本情報学習振興協会も、日本ハラスメントカウンセラー協会も、知りませんでしたが、全日本情報学習振興協会は「本財団は文部科学大臣の許可法人、文部省生涯学習政策局の所管の団体」と名乗っていますので、どちらも文部科学省を退官した官僚の天下り先として用意された団体でしょうか?
厚生労働省でパワハラ相談員が部下にパワハラを行う
さて、やっと本題ですが、厚生労働省のパワハラ相談員が、部下にパワハラを行って減給の懲戒処分を受けるという漫画のような事件が報道されました。
厚生労働省は4年前、部下に暴言などのパワーハラスメントにあたる行為をしたとして、当時の上司を減給処分にしました。この上司は、職場でパワハラ対策を担当する相談員だったということです。
~中略~
厚生労働省は暴言の具体的な内容を明らかにしていませんが、被害を受けた男性によりますと「潰してもいいのか」とか「死ねといったら死ぬのか」などと、公衆の面前で繰り返し、ののしられ、うつ病を発症して去年、退職したということです。
引用:NHKニュース
パワハラ相談員であった室長補佐の男性は、減給10分の1、一カ月という処分になりましたが、被害に遭った元部下の男性は、うつ病を発症して退職していますから、この処分は軽すぎるような気がしませんか?
パワハラ相談員がパワハラ事件のまとめ
パワハラ相談員とは何のことだろうと調べてみたら、聞いたことのない一般財団法人に辿り着きました。わたしが知らないだけで、みなさんはよくご存じかもしれませんが。
パワハラ相談員の資格を発行しているのは、文部科学省生涯学習政策局の所管の団体「全日本情報学習振興協会」と、同協会が設立した「日本ハラスメントカウンセラー協会」でした。
どちらの一般社団法人も、資格試験と講習を事業として行う団体です。
平たく言えば、何もないところから、講習や試験を、資格を生み出して売る商売をする団体です。
民間がこれを行うと「資格ビジネス」などと呼ばれて嫌われますね。
今回の厚生労働省のパワハラ事件では、わざわざ「パワハラ相談員」という単語が使われましたが、もしかすると「全日本情報学習振興協会」と「日本ハラスメントカウンセラー協会」の宣伝のために「パワハラ相談員」という単語が使われたのかもしれません。
パワハラにあって、うつ病を発症して退職された方にはお気の毒なことですが、早く気持ちを立ち直らせて、楽しく生きていってくださることを、心からお祈り申し上げます。
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