秋山木工という家具メーカーの丁稚制度がザノンフィクションで紹介され、丁稚制度の内容がすごいと話題になっています。
秋山木工の社長はどんな人で、どうして賛否両論ある丁稚制度を続けているのでしょうか。
秋山利輝社長が決めた丁稚制度のルールとはどんなルールで、わざわざ秋山木工の丁稚制度に飛び込む若者は、なぜ秋山木工を選んだのでしょうか。
秋山木工の丁稚制度の内容
秋山木工の丁稚制度の内容は、番組の中で紹介されていました。
入社すれば、ケータイも恋愛も、酒もタバコも禁止。さらに男女の区別なく、みんな丸刈り…一流の家具職人を目指し、住み込みでの修行生活。神奈川・横浜市にある家具製作会社「秋山木工」は、令和となった今でも、いわゆる「丁稚制度」を続けている会社だ。
引用:フジテレビ
秋山木工の丁稚制度では、住み込み、ケータイ電話禁止で家族との連絡は手紙、恋愛禁止、酒とタバコ禁止。
修行中は修行に集注するために、ケータイや酒タバコは辛抱せよとのことなんだろうなと、なんとなく理解します。
男女の区別なく、みんな丸刈り…これはちょっとわかりません。
この丁稚制度、秋山木工のホームページによれば、具体的には「1年目」「2~5年目」「6~8年目」「9年目」と四段階に分かれていて、9年目以降は独立していけるようです。
最初の半年は「秋山学校」に入校し、その後は丁稚の見習いとしてあいさつ、掃除、整理整頓などの基本を身につけます。
2年目から5年目までは基本を覚えるための訓練、自分の道具作り、工程の段取りを一人で出来るようになり、後輩を教えながらの訓練。
ここまでの5年間は住み込みの寮生活です。
そもそも、丁稚(でっち)という単語は、時代劇か落語でしか聞いたことがありませんでした。
丁稚ってどんな人のことなんでしょう?
丁稚とは何?どんな制度?
丁稚の制度は、秋山木工が創設した制度ではありません。
むかしの日本で、商家や職人の家に丁稚として10歳ほどの子どもが預けられました。
住み込みで、そろばんや商売の基礎から教わったり、職人になるための基礎から教えてもらったりしたのが丁稚奉公です。
商人や職人として一人前になるまで育ててもらう代わりに、家事労働なども丁稚がするのが当たり前でした。
基本的に無給であり、お休みも盆と正月くらいだったといいます。
衣食住の心配はなくて、盆と正月休みには少しの小遣いが与えられたり、着物の材料として反物を与えられたりしたことが記録に残っています。
落語に登場する丁稚さんは、必ずしも不幸そうではありませんが、実態がどうであったかは知る由もありません。
丁稚奉公の仕組みは江戸時代から始まったとされ、明治、大正ごろまで盛んに行われ、労働基準法により昭和22年に丁稚奉公は違法となりました。
労働基準法69条が、明確に丁稚制度を否定しています。
「使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない」
「使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない」
秋山利輝社長ってどんな人?
秋山利輝社長は、こんな人です。
ザ・職人の佇まいですね。
オーダーメイドの家具だけを作る家具職人で、秋山木工の家具は迎賓館や宮内庁にも採用されています。
1943年生まれだから、77歳か78歳ですね。
中学卒業から家具職人をこころざし、高度成長期の1971年、27歳の時に横浜市で秋山木工を設立。
秋山社長は、自分が育てられた徒弟制度が職人の育成に最高だと考えて、丁稚制度で職人を育て始めたそうです。
「親方が50年間培ってきた技術から礼儀作法まで、何から何までわずか4、5年で伝授してもらえるのだから、これだけ効率的なやり方は他にない」
引用:mimiyori
なるほど、親方が培ってきた技術も礼儀作法もその他も、短期間で伝授してもらえる効率的なやり方が、丁稚制度だというわけですね。
秋山利輝社長は、腕のいい職人なんでしょうが、丁稚をしている若者を罵倒したり、バカ呼ばわりしたりする様子を見て、いい気持ちのする人はいなかっただろうと思います。
昭和の頃までは、職人の親方に限らず、こういうパワハラ、モラハラを遠慮なく繰り出すオジさん、おじいさんはあちこちにいたものですが、まさか令和の世になってこんな光景が日常的に繰り広げられている世界があるとは…おどろきましたよね。
それでも秋山木工で丁稚がしたい若者たち
秋山社長の言う通り、優秀な職人である親方から、その技術も礼儀作法などの一切も伝授してもらえる丁稚制度は、家具職人を目指す若者には魅力的に映るのでしょう。効率的でもあるのかもしれません。
でも、丁稚期間5年間の修行中、ケータイなし恋愛禁止、酒タバコ禁止で、頭は丸刈りで住み込み生活をしてでも家具職人になりたいと切望する若者しか、覚悟して飛び込むことはなさそうです。
ハッ。
なるほどそういうこと?
秋山木工の家具に出会い、惚れ込んで、自分も家具職人としてこんな家具を作れるようになりたい!と願うようになった若者が、丁稚として秋山木工に飛び込むんですね!
だから、番組の中で見られたような「バカ」呼ばわりにも、パワハラ、モラハラに見える秋山社長のやり方にも、不満どころか、ありがたく受け止めて職人として逞しく成長するということなんでしょう。
どうか秋山木工で丁稚をしている若者たちが、それぞれ立派な職人となって自立して、将来は丁稚制度ではないやり方で見事に後進の職人を育ててほしい、と願わずにいられません。
秋山木工の丁稚制度に賛否両論
ネットでは賛否両論です。
秋山木工の社長、バカバカ言い過ぎ。特にご両親の前でとか本当失礼。#ザ・ノンフィクション
— KT (@sara87872398) February 21, 2021
ほんとそう思います。親の前で、預かっている大事な子どもをバカ呼ばわりするのは失礼すぎるし、大人としてどうなんでしょう。最低限の礼儀が出来てない、と言われてもしょうがないですよね。秋山社長は、職人としての技術だけじゃなくて、礼儀作法も教えるとおっしゃってるのに、と思いました。
食べるのが遅いやつは仕事出来ない、は明らかに理不尽ですよね。
すでに丁稚を卒業した人たちから、いろいろ聞いてみたいですね!
丁稚物語。
秋山木工に賛否両論あるようだけど、そこで頑張ってる本人達が良ければいいのでは?と思う。
残ってる3人は本当に、凛々しくいい表情してるよね。話は逸れるけど、こうやって職人さんが丁寧に気持ちを込めて作ってる家具って本当いいね!
大切に使いたくなる。— c.y (@CLiutian) February 21, 2021
秋山木工でがんばってる若者たちは、納得してがんばっているんだろうと思います。
わざわざ秋山木工を選んで入社したんですからね!
それでも秋山木工が丁稚制度を続ける理由
家具職人に限らず、いろいろな職人の技がもはや風前の灯火、どの業種も高齢化と後継者難で青息吐息です。
有体に言えば、すぐに「食える」ようにならない業種には、若者は魅力を感じないようになりました。
秋山木工の家具職人にしても、一人前になるのに最低でも5年、独立していくのは9年目からとのことですから、気の長い話です。
一人前になるのに時間がかかるのを承知の上で、それでも家具職人になりたい若者を集めて、確実に、できる限り効率的に育てたい気持ちが秋山木工の社長にはあるんだろうと思います。
自分が育てられたやり方と同じやり方で職人を育てようとしているのも、意地悪でそうしているわけではないでしょう。
ときに理不尽なことを言ったり、感情をぶつけたりしているように見えるのも、そうやって若者を鍛えているということなのかもしれません。
もちろん、そんな我慢を強いられることでしか、職人になれないわけではありません。のんびり、おっとり、気長に楽しみながら職人になる道も、どこかに残されているだろうと思います。
秋山社長はこれからも同じやり方で、効率的に家具職人を育てていくでしょう。
それもまた職人になるひとつの手段として残されていくといいですね!
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