植草歩選手(東京五輪空手代表選手)が、香川政夫選手強化委員長からパワハラを受けていたと訴えました。
植草歩選手が受けた暴力の内容は、ふつうに暴行、障害事件だと考えます。
空手の世界では、このような暴行が事件にならず日常化しているのでしょうか?
空手だけではなく、他の競技でも五輪選手強化の現場で同じようなパワハラ、暴行事件が起きているのでしょうか?
徹底調査します。
植草歩選手のパワハラ事件とは
植草歩選手がパワハラを受けたと訴えているのは、香川政夫選手強化委員長(帝京大学空手道部師範)による指導の中で起きた暴行です。
植草選手は、「竹刀で顔面を突かれ負傷」という言い方をしていますが、ふつうに考えてこれは傷害事件です。
万全に注意を払って稽古していて、たまたま当たった竹刀で怪我をした、とは言い難いからです。
「パワハラ」という言葉を使っているのは植草歩選手ではなくて、報道、または植草選手から相談を受けた日本オリンピック委員会の窓口のようです。
空手女子組手で21年東京五輪代表に内定している植草歩(28)=JAL=が28日、自身のブログを更新。帝京大時代の恩師で、全空連選手強化委員長の香川政夫氏からパワハラを受けていたとする問題について、今月24日に表面化して以降、初めて自身の言葉で説明した。
植草は冒頭、一部報道でパワハラについて全空連の通報・相談窓口に通報したとされていることを否定。「3月12日に、日本オリンピック委員会(JOC)の通報・相談窓口にご相談をさせて頂く機会を得ました。また、3月15日には、全空連の役員の方にもお話をさせて頂く機会を設けて頂けました」と説明した。
引用:スポーツ報知
植草歩選手がブログに経緯を公開
3月28日に、植草歩選手が自身のブログに「パワハラ」事件(植草選手自身はパワハラという言い方は使っていません)の経緯を丁寧に書いた長文を公開しました。
このたびは、私ごとで、多くの方々にご心配をお掛けしましたことを、とても心苦しく思っております。と同時に、多くの方々から暖かい励ましのメッセージを頂きましたことに、心から感謝致しおります。
ただ、いくつかの報道のなかには、事実ではない内容も含まれています。
そこで、私は、これから皆様に、私が経験してきた事実、そして、これまでに私が考えてきたことについて、きちんとお伝えをします。
植草歩選手が帝京大学空手道部師範である香川政夫師範から、在学中も卒業後も、10年にわたり指導を受けてきたことが書かれています。
ただ、昨年9月頃から、師範から、練習環境のこと、大学院進学のこと、その他プライベートや自活の為の仕事のことなどで、自立心・自尊心を傷つけられたり、大声で怒鳴られたりすることが多くなりました。
理由はわかりませんが、昨年の9月頃から植草歩選手と、香川政夫師範の間に何か行き違いが生じたようです。
植草選手は、強化合宿にも参加させてもらえなかったと訴えています。
そして、問題の竹刀による稽古についてです。
帝京大空手部香川政夫師範による竹刀を使う稽古
2020年の12月20日から、帝京大で香川政夫師範が竹刀を使っての稽古を取り入れ、1月までに三人の選手が怪我をしたことが植草選手のブログに書かれています。
植草歩選手は、2015年に左眼内壁骨折で手術を受けていて、左眼付近には現在でもプレートが入っていて、手術をした医師から次に左眼を負傷した際には失明するおそれがあると宣言されている、と続けます。
1月27日、師範の竹刀が私の目に当たってしまいました。師範が、私の顔面をめがけて竹刀の先端で突き、これが私の左目、そしてまさにプレートが入っていた箇所を直撃したのです。竹刀が直撃した時、私は、あまりの激痛に、その場で眼を押さえて動けなくなりました。その様な状態の私に、師範は「もういい。」と言って、稽古は終わりましたが、その際に師範から、「きちんと受けないとあかんのや。」と言われました。師範は私の怪我や治療手当てのケアの言葉はありませんでした。
その後も、香川政夫師範による竹刀を使った指導が続いたので、植草選手はナショナルチームコーチに訴えていますが、その後も香川政夫師範は竹刀を使うことをやめなかったそうです。
香川政夫師範は現在は竹刀を使うのをやめているようですが、どうしてやめることにしたのか、香川政夫師範の口から理由を聞きたいですね。
空手は怪我をしてあたりまえの競技なのか?
「空手」と聞くと、ちょっと危ない競技のイメージがあります。
でも、小さい子供から大人まで、空手をスポーツとして楽しむ人はたくさんいますから、とくべつ怪我をしやすい競技であるとは言えないでしょう。
植草歩選手が訴えている、香川政夫師範の竹刀を使った稽古のやり方は、常軌を逸しているように見えますし、ふつうはそんな稽古のやり方はしないでしょう。
ただ、帝京大の香川政夫師範がよほど特殊な指導者なのかというと、もしそうであれば全日本空手道連盟ナショナルチームの監督、強化委員会委員長が務まるでしょうか。
現役選手時代に強かったというだけでは、監督や強化委員長は務まらないだろうと思います。
ただしこの場合には、竹刀を使って選手を怪我させるような稽古のやり方を、止められる人がいなかった、というところに恐怖を感じます。
「そのやり方はまずい」と言える人がいなかった、または言う人がいても香川政夫師範の方が聞く耳を持たなかった、どちらにしても自浄作用のない組織になってしまっていた、ということになります。
植草歩選手の勇気ある告発?
もし、そんな組織の体質が帝京大空手部にとどまらず、ナショナルチームも、五輪強化チームも同じ体質だったとしたらどうでしょう。
そんな組織は時代遅れも甚だしいですね。
植草歩選手は、「様々な恐怖のため」と表現していますが、その恐怖心の本体には植草選手自身もまだ気づいていないかもしれませんし、気付いたとしても言語化するのが難しいかもしれません。
植草歩選手は、ブログ記事を通じて告発をしたことで、空手界に居場所を失うかもしれません。
空手界とは、とりもなおさず男社会そのものですから、女性である植草選手が一人で踏ん張っても、その体質を変えることは容易ではないでしょう。
それよりも、空手とは離れた世界で人生を楽しむ選択を植草歩選手がしたとしても、誰にも植草選手を責められません。
パワハラ事件は過去にもこんなにあった
空手五輪チーム内でパワハラがあったかどうか、真相はどうでしょう。
空手五輪チームに限らず軍隊ばりに、下っ端は上の言うことにはなんでも「はい」「はい」ということを聞くのがあたりまえの組織になっていたとしたら。
もし植草選手のように自分で考えて行動する下っ端があらわれたら…不都合極まりないはずです。
植草歩選手と、香川政夫師範の間にどんな行き違いが生じたものか、真相はわかりません。
植草選手のブログを読む限りでは、香川政夫師範が植草選手を「生意気」だと感じて疎ましく思うようになったのではないか、と感じます。
そこには、最近とみに目に付くようになった、「おじさん」または「おじいさん」である男性による、若い女性への蔑視、裏を返せば劣等意識が透けて見えるような気がしませんか?
レスリングの伊調馨選手が、全日本レスリングヘッドコーチ栄和人強化本部長からパワハラを受けていたと報道されたのは2018年でした。
2013年には、ロンドン五輪の柔道に出場した国内女子トップ選手15人が、園田隆二監督やコーチによる「パワハラ」があったことを、日本オリンピック委員会に訴えました。
これらの被害の訴えは、氷山の一角に過ぎないかもしれません。
どの選手も、植草歩選手と同じように「様々な恐怖」と戦っているからです。
植草歩選手は傷害事件の被害者なのか
さて、植草歩選手は傷害事件の被害者なのでしょうか?
たとえ過失であったとしても、香川政夫師範は竹刀で植草歩選手の顔を突いて怪我をさせています。
もし、植草選手が訴えれば、傷害罪が成立するでしょう。
植草選手は、香川政夫師範を訴えることができるでしょうか、どうでしょうか。
植草歩選手にとって香川政夫師範は、10年もの間、指導を受けた師でもある人物ですから、簡単に訴えることはしないだろうと思います。
香川政夫師範の方も、訴えられることなどあるはずがないと足元を見ているでしょう。
その力関係こそが問題の本質で、だからこそいわゆる「パワハラ」がなくならないんですね。
たくさんの、無言の視線が注がれることによって、いくばくかは抑止効果のような力が生まれるかもしれません。
引き続き、注視していきましょう。
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