タケノコの下茹でに生米を使って、茹で汁のお粥も美味しく食べる!というTwitterの投稿に「痛風、尿路結石、腎臓病のリスク」があり「人工透析の余生を送ることになります」とするリプが付き話題になりました。
タケノコのシュウ酸は本当に痛風や尿路結石の原因になるのでしょうか?
どうやってあく抜きしたら、タケノコを安心して食べられるでしょうか。
さっそく調べてみましょう!
タケノコ生米お粥とは何?
たけのこ生米お粥とは、料理研究家の荻野恭子さんのレシピだそうです。
タケノコの下茹で、あく抜きをするために米糠を加えたお湯で茹でるのが一般的ですが、米糠の代わりに生米を使って、茹で汁はおかゆとして食べるというレシピのようですね。
たけのこ革命……!料理研究家の荻野恭子さんがおすすめしていらっしゃる、ヌカの代わりに生米を使って、しかもその煮汁が最高に美味しいおかゆになるという信じられないような技を試してみました。信じられないほどおいしいおかゆができて、今までの茹で方は何だったの?????と驚愕です。 pic.twitter.com/tmmkgOk2dF
— おかゆ研究中 鈴木かゆ (@kayu_szk) April 8, 2021
この投稿に対して、食べる方に、痛風、尿路結石、慢性腎臓病のリスクを説明したほうが良いと思います。とリプが付きました。
たけのこの下茹でに米ぬかを使うのは水溶性のシュウ酸を難溶性のシュウ酸カルシウムにして悪出汁(あくだし)する先人達の知恵です。糠の吹きこぼれが面倒という理由でシュウ酸の悪出汁をお粥でするなら、食べる方に、痛風、尿路結石、慢性腎臓病のリスクを説明したほうが良いと思います。
— Takapyon (@takapyon_2002) April 11, 2021
同じTakepyonさんはさらに続けて、「腎臓で再結晶化して尿路結石で救急車。糸球体が傷つき慢性腎臓病(CKD)で人工透析の余生を送ることになります」と投稿しています。
シュウ酸を身体に摂取しないで下さい。シュウ酸溶解度は水100gあたり90℃で168g、40℃で30g。食べたお粥のシュウ酸がつま先で138g針状再結晶で親指に激痛が走り病院へ。腎臓で再結晶化して尿路結石で救急車。糸球体が傷つき慢性腎臓病(CKD)で人工透析の余生を送ることになります。 https://t.co/F6otoiyP4l
— Takapyon (@takapyon_2002) April 11, 2021
タケノコの下茹でをしたお湯は捨てるのがふつうですが、慢性腎臓病のリスクがあるほど危険なものだとは知りませんでした。
なんだかタケノコを食べるのもためらわれますが、本当にそんなに恐ろしいのでしょうか?
タケノコに含まれる危険なシュウ酸とは?
たけのこ生米おかゆを食べないで、と注意喚起の投稿がありましたが、タケノコに含まれるそんなに危険な成分とは何でしょうか?
タケノコにはシュウ酸という成分が含まれているので、それが尿路結石や慢性腎臓病の原因になると主張されているんですね。
タケノコのアクの成分となっているのは「蓚(シュウ)酸」と「ホモゲンチジン酸」です。
このシュウ酸とホモゲンチジン酸は、タケノコだけではなく山菜やほうれん草などの野菜にも含まれいて、苦みや渋み、えぐ味といった「アク」の正体です。
そもそも、苦みや渋みやえぐ味があるから大量は食べられない、ようになっていると思いますが、違うんでしょうか?
シュウ酸はすごく美味しいから食べすぎ注意、というならわかりますけどね。
タケノコが尿路結石の原因になるのは本当?
さて、タケノコのシュウ酸が尿路結石の原因になるというのは本当でしょうか?
どうやら尿路結石のうちで頻度の高いシュウ酸カルシウム結石のことをさしているようです。
「尿中への過剰な尿酸排泄が,シュウ酸カルシウム結石の形成と密接な関係がある」
「尿中で溶解している尿酸が一定の濃度を超えると,シュウ酸カルシウムの溶解度を下げ,結晶が析出しやすくなることが主な原因と考えられている」
「一方,最近では,高尿酸尿の状態は,必ずしもシュウ酸カルシウム結石のリスクを高めないという,大規模な横断研究の結果も報告されている」
要約すると、現段階では尿中への過剰な尿酸排泄が「シュウ酸カルシウム結石」と密接な関係があることまではわかっているが、必ずしもリスクを高めない、という研究結果もある。
過剰な尿酸排泄については言及されていますが、食事で摂取するシュウ酸については触れられていません。
高尿酸血症や痛風に合併する結石は,必ずしも尿酸結石ばかりではない。尿路結石のうち,最も頻度が高いシュウ酸カルシウム結石の形成にも大きく関与している。Coeらは,尿中への過剰な尿酸排泄が,シュウ酸カルシウム結石の形成と密接な関係があるとし,高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石症(hyperuricosuric calcium oxalate nephrolithiasis)の存在を明らかにした。尿中で溶解している尿酸が一定の濃度を超えると,シュウ酸カルシウムの溶解度を下げ,結晶が析出しやすくなることが主な原因と考えられている。一方,最近では,高尿酸尿の状態は,必ずしもシュウ酸カルシウム結石のリスクを高めないという,大規模な横断研究の結果も報告されている。
もちろん、体内にシュウ酸がなければシュウ酸カルシウム結石は作られないでしょうが、健康であれば排泄して終わりであるシュウ酸が、どうしてシュウ酸カルシウム結石を作るのかは研究段階でまだよくわかっていないということです。
そして植物由来のシュウ酸は、下茹ですることで激減します。
「タケノコの生米おかゆが痛風、尿路結石、慢性腎臓病の原因になる」説は、濡れ衣である可能性がありますが、わざわざ「アク」を食べない方がいいですね!
シュウ酸を分解する食べもの
シュウ酸が含まれるタケノコを食べるのが不安になってしまったときは、シュウ酸を分解する食べものと一緒に食べ合わせるのはどうでしょう!
シュウ酸を分解する食べものを調べてみると、
枯草菌:納豆など
エノキタケ
コウジカビ:味噌、醤油、甘酒など
などがシュウ酸デカルボキシラーゼを持ち、シュウ酸を分解して二酸化炭素とギ酸にする事が出来るそうですよ!
タケノコ生米おかゆはそんなに美味しいの?
最初にタケノコ生米お粥がおいしい、と投稿した「おかゆ研究中」さんですが、美味しくないものを美味しいと偽ってわざわざ投稿するでしょうか?
じつはすごく美味しいのかもしれないと思いませんか?
バズってるたけのこの茹で方、これかな
タケノコの下茹ではお米でOK!|しらいのりこ/ごはん同盟 @shirainoriko #note #おうち時間を工夫で楽しく https://t.co/VSMrfJG7KT— みり俵/冬春ストガリアクキュ (@ritaiwrita) April 11, 2021
こちらの方もタケノコの香りがうつったお粥が美味しい、とおっしゃってますね。
「あく」が溶け込んだお湯で出来たお粥が美味しい、というのはにわかには信じがたいですが、試してみないとなんとも言えません。
よほど新鮮なタケノコを使わないと、えぐみや渋み、苦みのあるお粥になってしまいそうな気がしますが、なにかしらの化学変化が起こって別の美味しい物質になっている可能性もある?
または、「あく」そのものに、ある種の旨みを感じているのかもしれません。
スーパーなどで販売されている「水煮たけのこ」は、ほとんど「あく」を感じませんが、タケノコの香りや旨みは薄いですよね。
「あく」は、タケノコの旨みの元でもあるということですね。
シュウ酸は米ぬかのあく抜きで取り除ける?
タケノコに含まれるシュウ酸は、米ぬかを使ったあく抜きで取り除けるでしょうか。
先ほどのツイートには、
「たけのこの下茹でに米ぬかを使うのは水溶性のシュウ酸を難溶性のシュウ酸カルシウムにして悪出汁(あくだし)する先人達の知恵です」
と書かれています。
シュウ酸(シュウ酸水素ナトリウムなど)は水溶性なので、茹でるだけでもお湯の中に溶けだしますが、米糠にカルシウムってそんなに豊富に含まれていましたっけ?
米ぬか食品成分表(可食部100gあたり)
栄養成分 | 単位 | |
---|---|---|
水分 | g | 10.3 |
たんぱく質 | g | 13.4 |
脂質 | g | 19.6 |
炭水化物 | g | 48.8 |
食物繊維 | g | 20.5 |
ナトリウム | g | 7 |
カリウム | mg | 1500 |
カルシウム | mg | 35 |
マグネシウム | mg | 850 |
リン | mg | 2000 |
鉄 | mg | 7.6 |
亜鉛 | mg | 5.9 |
銅 | mg | 0.48 |
マンガン | mg | 14.97 |
ビタミンE | mg | 10.4 |
ビタミンB1 | mg | 3.12 |
ビタミンB2 | mg | 0.21 |
ナイアシン | mg | 34.6 |
ビタミンB6 | mg | 3.27 |
葉酸 | mg | 180 |
パントテン酸 | mg | 4.43 |
ビオチン | mg | 38.2 |
米ぬか100gあたり、ナトリウム7gに対してカリウムは1500mg、カルシウム35mg、マグネシウムは850mg。
米糠はカルシウムが豊富ではありませんが、わずかに含まれてはいますね。
わずかなカルシウムで「シュウ酸カルシウム」が作られて、あく抜きするには充分だということでしょうか。
それとも米ぬかを使ったあく抜きにはカルシウム以外の理由であく抜き効果があるのでしょうか?
米ぬかでタケノコのあく抜きが出来る理由
米ぬかでタケノコのあく抜きができる理由は、米ぬかを水に入れるとアルカリ性になるからだと説明されることがあります。
同じ根拠で、重曹を使ったタケノコのあく抜き方法もあります。
プロが教えるタケノコのあく抜き2選
「昔からアク抜きには、米の磨ぎ汁や米ぬかなどを使う方法がありますが、もっと簡単に出来るのが、食用重曹です。タケノコは頭を少し斜めに切って、切り口から縦に少し包丁を入れ(皮を剥きやすくするため)、鬼皮を剥き、根元の硬い部分を切り落として縦半分に切ります。そのタケノコを食用重曹小さじ1~1.5程度を1Lの水に溶かした中で、20~30分煮ます。このときふきこぼれないように注意してください。串が通る程度に茹でたら火を止め、そのまま半日程度おいて自然に冷まします」
引用:ライブドアニュース
この重曹を使ってあく抜きする方法なら簡単ですね!
ただし、重曹の量が多いとタケノコが黄色~茶色くなってしまいます。
タケノコの鮮度にもよりますが、重曹の量が多いとせっかくのタケノコの風味も失われてしまうことになり残念です。
重曹の使用量は水1リットルあたり小さじ半分から1杯程度で充分です。
炭酸塩などのアルカリ剤であく抜きをしてから、クエン酸などの酸性剤でpH調整してあるのがスーパーなどで販売されている「水煮たけのこ」です。
まとめ
タケノコの下茹でに生米を使って、茹で汁もおかゆとして美味しく食べられるというツイートに対して、痛風、尿路結石、慢性腎臓病などのリスクを指摘するリプがつきました。
たしかに、タケノコはシュウ酸を含んでいますが、「あく」であるシュウ酸を取り除くために、たけのこを米ぬかで下茹ですると水溶性のシュウ酸(シュウ酸水素ナトリウムなど)は茹で汁に流れ出ます。
少量の重曹であく抜きする方法が簡単で、あくがよく抜けることもわかりました。
タケノコなどに含まれるシュウ酸が尿路結石の原因になるかどうかは、現段階ではまだわかっていません。
痛風や慢性腎臓病とシュウ酸の関連についても同様ですが、既往症のある人はシュウ酸を含む食品の食べ過ぎに注意が必要なのかもしれません。
とはいえ、どんな食べ物でも極端に食べ過ぎればリスクはゼロではありませんね、たとえそれがおにぎりでも、食パンでもです。
タケノコを食べるのが不安になってしまった人は、シュウ酸を分解する「納豆やエノキダケや、味噌、醤油や甘酒」と一緒に食べてはいかがでしょう。
でも「タケノコを食べると尿路結石になる」というのは濡れ衣の可能性があります。
Twitterに流れてくる情報には、往々にしてこういうことがあり、長く語り継がれてしまうこともあるので、観察を続けてみようと思います。
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